人の物語り
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国分寺物語
『人の物語り』vol.03「カフェスロー 吉岡さん」
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いつものように何気なく、国分寺を散歩していた。
普段何もなく見えるような光景でも、少し意識して周りを見渡すと
実はたくさんのキラキラした発見があったりする。
人との出会い、素敵なお店との出会い、動植物との出会い、
四季の変化の気づき……。
私は密かに、そんな発見を期待しながら歩いていく。
ふと、白い外装のシンプルな建物が目に入った。
そこには「CafeSlow」という文字が―。
「カフェ発見!」と嬉しくなった。
それが最初のカフェスローとの出会いだった。
店内に足を踏み入れると、温かみのある照明とともに
開放的な空間が広がっていた。
「こんなに広いカフェってあるんだ」
と、つい驚いてしまう。 飾り過ぎずナチュラルな内装は、
何だかホッと落ち着かせてくれる。
日常がめまぐるしく過ぎていく、
にぎやかな国分寺街道の中にあって、
カフェスローではゆったりと時間が流れていた。
国分寺物語
『人の物語り』vol.03「カフェスロー 吉岡さん」
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カフェスローがオープンしたのは、2001年。
実はオーナーである吉岡さん、カフェ経営とは
無縁とも思える経験をされてきた。
ユネスコで30年間務め、市長選に出馬、
さらには1年間、放浪の旅をする…という生活だ。
人生の転機となったのが、阪神・淡路大震災だ。
その地は吉岡さんと奥さんの故郷―。
震災を経て、「自分の住んでいる場所で根を張り、
人と繋がりをもって働きたいと思うようになった」と
強く思ったという。
お店の名前でもある「Slow」はここに由来しているそう。
「つながり」という意味があり、そこに吉岡さんの想いが
表れている。
話を聞いているうちに、吉岡さんが地元を思う、
とても優しく熱心な方だとわかった。
国分寺物語
『人の物語り』vol.03「カフェスロー 吉岡さん」
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吉岡さんの自然に対する想いは強い。
「大量生産・大量消費するということは、
世界中のありとあらゆる自然を破壊するということにもつながる」
と、吉岡さんは強い想いを訴えかけるように言う。
「人間にとって世の中が便利になりすぎた結果、自然を破壊し人と
自然とのつながりを断ち切ることになっている」と言う。
そっか。つながり、Slowってとても大きな枠なんだ。
人が生きていくために必要な周囲の環境との
関わり合いすべてを指すのだ。吉岡さんはこう続ける
「本来の関係に戻すために、つながりを元に戻す必要がある」
私は、吉岡さんの言う「つながり」を実感したことは、まだない。
便利な日常はもちろん、木々の少ない住宅地に住んできた。
自然が大切ということは、理解はしているつもりだ。
しかし、どこか漠然としていたように思う。
目の前で真摯に語る吉岡さんは違う。
自然とのつながりを大切に想い、それを実践している。
国分寺物語
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カフェスローでは、オーガニックのメニュー、暗闇カフェ、
スローギャラリー、地域通貨マーケットなど、
様々な特徴的な取り組みを行っている。
私は、吉岡さんのこだわりを聞いてみた。
「地球に負荷をかけない暮らしの提案するためには、
今大事な情報を多くの人にちゃんと伝えて、
より実感できるようなイベントなどで訴えかける。
そのためには面白くなきゃいけない」と吉岡さん。
そうか。知ってもらうきっかけづくりなんだ。
ユニークなイベントによって人々の関心を集め、
発信しているんだ。
「お店のなかでおいしい物を食べてもらうだけではなくて、
それぞれの家庭に波及させることで社会が変わっていくことが大事。
こだわりをもって、常にチャレンジ精神を忘れないメニュー作りをしている」
後日、私は再びカフェスローを訪れる。
その日は「冷しにゃー麺」なるものが妙に気になった。
野菜たっぷりで、白米粉を使った麺料理のこと。
見たことのないメニューで、興味津々に注文してみると、
とても詳しく教えてくれる吉岡さん。
こだわりのメニュー作りや客へのサービス精神には、
吉岡さんの並々ならぬ想いがあってこそなのだ。
「使う食材は、顔が見える関係で安心して消費できる
“友産友消”のものを取り入れている」そうだ。
単純に同じ地域というだけではなく、
信頼できる人と人のつながりから生まれた
安心のメニューが、カフェスローにはある。
国分寺物語
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吉岡さんのスロー活動は、カフェ経営にとどまらない。
その活動の一つが「ぶんぶんウォーク」だ。
「国分寺に貢献したい。国分寺という地域でどうあるべきか」
吉岡さんは言う。
カフェスローはもともと、府中にお店を構えていたが、
やがて国分寺に移転した。
そのとき、商店街の方々に大歓迎されたことで、
「この土地のために何か貢献したい」という想いが生まれたそう。
吉岡さんが、国分寺というコミュニティに訴えかけることで、
人が集まり一つの大きなイベントを作り上げる。
主催者として協力してくれる人はもちろん、
参加者を巻き込み地域が一体となる。
地域において、スローすなわちつながりを築き
波及させることができるのは、
吉岡さんの人望があるからこそ。
生き生きと話す吉岡さんの顔をみて、
この地域への強い想いが、
人を引き付けるのであろうと思った。
国分寺物語
『人の物語り』vol.03「カフェスロー 吉岡さん」
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私は、吉岡さんに今後の国分寺、
ひいては今の日本に対する想いを訪ねた。
吉岡さんは言う。
「スロータウンネットワークを目指したい」と。
これもまた、私には聞きなれない言葉であった。
「スロータウンと呼べるような地域を、
日本中に広げていきたい。
そのためにはまず、もっとも身近な地域である国分寺を
スロータウンにすることが先決なんだ」 スローが少しずつ、
人へ、町へ、日本へ、そして世界へ広げていく。
そして、つながる。時間がかかるかもしれない。
しかし、吉岡さんの意志、想いは人から人へ、
確実につながっていく。
そんな未来を想像すると、何だか夢が広がる。
今後の暮らしに希望が持てる。 楽しみになってきた。
国分寺にあるこのカフェには、
希望がつまっているのかもしれない。