国分寺物語

町の物語り

パンの家
ラ・ママン

国分寺物語
『町の物語り』vol.04「パンの家 ラ・ママン」

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懐かしい雰囲気に
誘われて

緑の屋根のパン屋さん

1月の昼下がり。
風が吹くと寒さが身にしみる。

現在、新しい国分寺の顔を覗かせている北口を抜けて
賑わいを見せる大通りから右に一本入ると、
地元に長く愛されているお店が並んでいる。

どこか落ち着くな。

そんな、いい意味で変わらない景色に
懐かしさを感じながら散歩していると、
緑色の屋根に目を引かれた。

「パンの家」と、大きく書かれている。

そのパン屋さんは「ラ・ママン」という
オシャレで覚えやすい名前だった。

どんな意味なんだろう。

そんなことを考えながらお店に近づいてみると
甘くて香ばしい香りがした。

そういえばお昼ご飯食べてなかったな。
なぜか急におなかが減ってきた。
大好きなメロンパンを買って食べようと、お店の扉を開いた。

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『町の物語り』vol.04「パンの家 ラ・ママン」

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名前の由来は
“優しいお母さん”

想いの詰まった手作りパン

店内には、たくさんの焼きたてパンが
所狭しと並べられている。

豊富なパンの種類に思わず目移りしながら店内を見渡していると
お店のこだわりが書いてある額縁を見つけた。

そこには“おいしくて安全”なパン。
つまり、“ママが子どもたちに安心して食べさせられるパン”を
提供するためのこだわりが書いてある。

そうか。美味しいだけじゃなくて、
安心して食べられるように作られているんだ。

そういえば、「ラ・ママン」という名前の由来はなんだろう。
僕は店員さんに聞いてみることにした。

「『ラ・ママン』は、フランス語で優しいお母さんという意味なんですよ。」

なるほど。

お店のこだわりや焼きたてのパンにも
“優しいお母さん”の想いがたくさん詰まっているんだ。
素敵なパン屋さんだな。

「創業した当初は、子どもたちに安心して食べさせることができる
美味しいパン屋がなかったですからね。
難しさもありましたけど、こだわりを持ってパンを作っているんですよ。」

作る人の想いがぎっしり詰まった焼きたてパンを食べることができるお店。

国分寺にはたくさん来ているけれど、
こんなお店があるなんて知らなかったな。

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“安心”だから選ばれる。
“美味しい”から愛される

こだわりを追求した天然酵母

お話を聞かせてもらえばもらうほど、
安心で美味しいパンへのこだわりが伝わってくる。

「初めは、手作りのパン屋さんというだけで、
たくさんのお客さんに喜んで食べてもらえていました。」

今でもお店でイチから作って焼き上げているパン屋さんは、
とっても魅力的だし、当時はなおさらだろうな。

「そこで、もっとお客さんに喜んでほしい。
もっと安心で美味しいパンを届けたいと追求したところ
“無添加”で“天然酵母”のパン作りにたどり着いたんです。

今でこそ“無添加”の食品はめずらしくないですよね。
当時は、難しさもありましたがやってみることにしたんです。」

たしかに、子どものためにパンを選ぶお母さんも
こんなに“こだわり”があるパン屋さんなら安心だな。

そういうこともあり、ラ・ママンのパンは
地元の保育園にも選ばれているらしい。

「お店のメンバーの1人が地元の保育園と縁があって
ラ・ママンのパンを保育園で食べてもらうことになったんです。

保育園としても園児のために栄養の計算をしていますから
安心できて美味しいパンを残さず食べてもらうために
ラ・ママンのパンを選んで頂いたんですよ。」

地元に愛されるパン屋さん。

もっとよく知りたくなってきたな。

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パン屋さんって
楽しそう!

地元のお母さんがつくった「パン屋さん」

平成元年に創業したラ・ママン。
このお店は、国分寺や小平、国立、小金井に住んでいる
15人程の主婦が集まって開業したらしい。

「当時、生活クラブ生協が中心となって
誰かに雇われるということではなく、“自分たちで働きたい”
と考えている人を支援する運動があったんです。

そこで、『自分たちが住む地域で起業したい』
『地元で自分たちの働ける場所を作りたい』という
想いを持った人が集まって立ち上げたのがラ・ママンなんです。」

そうだったんだ。

僕は、ラ・ママンのパン作りに込められている
“ママが子どもたちに安心して食べさせられるパン”と
このお店から伝わる“どこか懐かしい雰囲気”の理由が
なんとなく、わかった気がした。

「だけど、なぜパン屋さんをやろうと考えたんですか?」

この質問に店員さんは、笑顔ですぐに答えてくれた。

「だって、パン屋さんって楽しそうでしたから!」

あっさりと返ってきたシンプルな答えに
正直、戸惑ってしまった。

だけど、きっと楽しんで焼き上げているパンだからこそ
地元から長い間、愛され続けているのかもしれないな。

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“パン作り”から、
地域の“笑顔づくり”へ

求めているのは地域の方々の喜ぶ姿

もちろん、お店を長い間やっていくということは
今の僕には考えられない程、大変なことなんだと思う。

確かにラ・ママンの焼きたてパンには
こだわりである“おいしくて安全”なパンを作るため
素材などにも“特別なもの”を使っている。

これは、僕らからすればとても魅力的だ。
ただ、それだけ強いこだわりの裏には
たくさんの苦労があるようだ。

「こういう形体のパン屋は、自分の生計を
立てることもなかなか難しいんです。
やっぱり良いものを使ってパンを作っていくためには、
身を削ってパンを作る必要があるんです。」

「でもね・・・」

そう切り出すと、
過去に苦労したいくつかの出来事を教えてくれた後、
パン作りに対する“想い”を真剣な表情で語ってくれた。

「私たちは、利益を目的として、お店をやってはいないんです。
パン作りを通じて地域に少しでも貢献できること、
この地域の方々に喜んでいただけることを目指しているんです。」

地元である“地域に貢献したい”という
熱い想いで焼かれたラ・ママンのパン。

“国分寺を元気にしたい”そんな僕の想いと一致したからか
パンを一口かじると、どこのパンよりも美味しく思えた。

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国分寺のラ・ママン

本日も焼きたてパン、販売中!

僕が初めてこのお店を訪れた2015年は、
国分寺駅の北口再開発が行われている真最中だった。

「初めは、やっぱり怖かったですよ。

でも、再開発によって人の流れが変わり、常連さんだけではなく、
若い方たちにもお店に来てもらえるようになったんです。」

変わり続ける国分寺の不安と期待を率直に教えてくれた。

「今後のことは、わかりませんけど
お客さんに喜んでもらえるように一生懸命やるだけですからね。」

笑顔でそう言うと、また忙しそうにパンを作り始めた。

パンの家 ラ・ママンは、
より多くの地元の人に食べてもらうために
2015年から「ぶんぶんうぉ~く」という国分寺のお祭りに
パンを出店するなど、新たな取り組みも始めている。

また、「こくベジ」という国分寺産の野菜を使った
メニューを数多く取り揃えている。

そんな地域の人に愛され続ける町のパン屋さんは、
日々、変化を見せる国分寺の様子を
“優しいお母さん”のように見守りながら
美味しいパンを焼き続けている。

明日もまた、素敵な“国分寺”と出会えるといいな。

パンの家 ラ・ママンのプロフィール

緑の看板が目印の「ラ・ママン」は、国分寺駅から徒歩4分ほどに位置。国産小麦を使った天然酵母のパンは、安心・安全を求める多くの住民から愛されている。また、近隣の保育園でも使われるなど、国分寺っ子にとっては子どもの頃から親しんできた味でもある。 東京都国分寺市本町2-23-3 042-325-5107 10:00〜18:30(日・祝祭日定休)

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